Yappli Tech Blog

株式会社ヤプリの開発メンバーによるブログです。最新の技術情報からチーム・働き方に関するテーマまで、日々の熱い想いを持って発信していきます。

macOSからAmazon LinuxにGoアプリケーションをクロスコンパイル

はじめに

サーバーサイドエンジニアの加納です!

皆さんは普段からGoを利用して色々なアプリケーションを作成していますか? 自分は、Goが好きなのでよくGoで色々なアプリケーションを実装しています!

今回は、macOSの開発環境からAmazon Linux向けにGo CGOアプリケーションをクロスコンパイルする実装について解説します。具体的には、go-sqlite3とMySQLを利用するバッチアプリケーションを例に、クロスコンパイルの実装方法と直面した課題について共有します。

背景と課題

今回実行したbatchでは以下の要件がありました:

  • go-sqlite3を使用したローカルデータの操作
  • MySQLへの接続機能
  • macOSの開発環境からAmazon Linux向けにビルド
  • CGOの利用が必須

特に、go-sqlite3はCGOを利用するため、単純なGOOS=linuxによる通常のクロスコンパイルでは対応できない課題がありました。 ヤプリで支給されているのはMac book proなので、Amazon Linux上でのbatchを実行するには上の問題を解決する必要がありました。

解決策:musl-crossとMakefileの活用

この課題に対して、以下のアプローチで解決しました:

  1. musl-crossを利用したクロスコンパイラの導入
  2. Makefileによるビルドプロセスの自動化
  3. 適切なクロスコンパイル環境の設定

実装したMakefile

BINARY_NAME=batch
VERSION=1.0.0

# クロスコンパイル設定
CGO_ENABLED=1
GOOS=linux
GOARCH=amd64
CC=x86_64-linux-musl-gcc

.PHONY: all setup check-env install-deps build clean

# デフォルトターゲット
all: check-env install-deps build

# 環境チェック
check-env:
    @echo "=== Checking build environment ==="
    @if ! command -v brew >/dev/null 2>&1; then \
        echo "Error: Homebrew is required. Please install it first."; \
        exit 1; \
    fi
    @if ! command -v $(CC) >/dev/null 2>&1; then \
        echo "Installing cross compiler..."; \
        brew install FiloSottile/musl-cross/musl-cross; \
    fi
    @echo "Build OS: $$(uname -s)"
    @echo "Target OS: Linux (Amazon Linux 2)"
    @echo "Target Architecture: amd64"
    @echo "Cross Compiler: $(CC)"

# ビルドプロセス
build:
    CGO_ENABLED=$(CGO_ENABLED) GOOS=$(GOOS) GOARCH=$(GOARCH) CC=$(CC) \
    go build -ldflags "-linkmode external -extldflags '-static'" -o $(BINARY_NAME) main.go

実装のポイント

1. musl-crossの活用

muslクロスコンパイラを使用することで、Linux向けの静的リンクバイナリを生成できます:

brew install FiloSottile/musl-cross/musl-cross

github.com

2. CGO設定

CGOを有効にしつつ、静的リンクを実現するための設定:

CGO_ENABLED=1
CC=x86_64-linux-musl-gcc

3. 静的リンクの実現

バイナリの移植性を高めるため、静的リンクを指定:

-ldflags "-linkmode external -extldflags '-static'"

利点と効果

この実装により、以下のメリットが得られました:

  • 開発環境(macOS)とデプロイ環境(Amazon Linux)の差異を吸収
  • ビルドプロセスの自動化と標準化
  • 依存関係の明確な管理
  • 静的リンクによる移植性の向上

まとめ

Go CGOアプリケーションのクロスコンパイルは、適切なツールと設定を組み合わせることで効率的に実現できます。今回の実装例が、同様の課題に直面している開発者の参考になれば幸いです。

補足:トラブルシューティング

よくある問題とその解決策:

  • muslクロスコンパイラのインストール失敗
    • Homebrewの更新を試す
    • brew doctorでHomebrewの状態確認
  • 静的リンクエラー
    • ldflags設定の確認
    • CGO_ENABLEDの設定確認
  • 依存ライブラリの問題
    • go mod tidyの実行
    • 依存関係の明示的なバージョン指定

この記事が、GoのCGOアプリケーション開発の参考になれば幸いです。