Yappli Tech Blog

株式会社ヤプリの開発メンバーによるブログです。最新の技術情報からチーム・働き方に関するテーマまで、日々の熱い想いを持って発信していきます。

俺たちはなぜテックブログを書くのか〜ブログの効能と書き方とメンタル的TIPS〜

サーバーサイドエンジニアの田実です!

ヤプリのテックブログにちょくちょく投稿しているのですが、今数えてみたら23記事も書いていたようです。 ヤプリのテックブログに投稿した数も多いのですが、 実は私の ブログ も含めると、これまで書いてきたブログ投稿数は400以上になります。

そういうわけで、社内外でブログを書くコツやネタ探しなどで相談を受ける機会も増えてきたのと、今年もヤプリのテックブログが盛り上がっているため、今回は「ブログを書く技術」というメタなテーマで書いていこうと思います!

※この記事は ヤプリ #1 Advent Calendar 2022 の11日目の投稿になります!

俺たちはなぜテックブログを書くのか

一般的に会社のテックブログは採用文脈で語られることが多いと思います。 その会社がどういう技術を使ってどのような課題を解いているのか、開発フローやチームの雰囲気はどんな感じなのか等、テックブログを書くことで Job Description だけでは伝わらない多くの情報を候補者に届けることができます。 ブログを始めとした社外アウトプットにより、候補者に会社を認知してもらうだけではなく、自社のチームやプロダクトに魅力を感じてもらいお互いのミスマッチを防ぐこともできます。 テックイベントの協賛と同様、これらはすぐに効果が出ないものの、中・長期的には確実に効果がある施策です。 私がカジュアル面談や採用面接を担当した際に、テックブログを読んできてくれる候補者がいたり、チーム・プロダクトや課題を説明するためにブログの内容をそのまま案内することもあり、実際にテックブログの効果を感じることができています。

しかしながら、会社から見た採用の側面だけではないそれ以上の効能がブログ執筆にはあると私は考えます。具体的には以下のような効果を期待しています。

スキルの向上

テックブログを書くことにより、文章をわかりやすく書くスキルを伸ばせます。 外部発信をするというモチベーションにより、全体構成や1文のわかりやすさなど、読み手を意識した文章を考えるきっかけになります。 前提や背景も含めて対象読者に正確に伝えることの難しさを感じたり、よりよい文章を書くために他の人が書いた記事を読んで学ぶこともあると思います。

また、書く内容が技術的なものであれば、技術の正しさを意識することになります。 技術を正しく理解するには、一次情報を確認し、手を動かす必要があります。 こうして深堀りした結果、その技術がどのようにして動いているのか等の深い部分まで理解できるケースもあります。 文章化することで自分の知識が整理されますし、もし忘れたら書いたブログを読みかえせば良く、自分の資産としても活用できます。*1 このように技術を正確に理解し、深堀りするきっかけとしてもブログ執筆は有用です。

コミュニティへの貢献

技術を発信するということはコミュニティへの貢献にもつながります。 技術を使った課題解決やハマりの解消を公開することにより、コミュニティにその技術のノウハウが溜まります。 このようにコミュニティに還元することで、より難易度の高い課題解決ができるようになり、さらにその技術が便利になる可能性もあります。

また、技術を発信するところに技術的知見が集まるといった効果も期待できます。 私のヤプリでの実体験で言うと、Goに関するテックブログを公開したところ、弊社技術顧問であるtenntennさんからフィードバックがあり、議論のネタになったり新しい知見を得るきっかけになりました。

フィードバックを受けている図

社内共有・社内認知

SREの望月さんの記事 にもある通り、ブログは社内共有の1ツールとしても活用できます。 社内Wikiに書ける内容であってもブログに書けば社内外で見れて便利ですし、自分がやっていることを社内にアピールする効果もあります。

ブログが社内共有で役に立ってそうな1コマ

自分のやってきたことが言語化・視覚化されるのも良い点です。 弊社では Win Session など自分やチームがやっていることをアピールする場があるのですが、それでも技術的な細かい創意工夫は伝わりづらいところがあります。 その点テックブログでは細かくて伝わらないアレコレを書き放題ですから、やったことをドヤるなどモチベーション管理の1つの手段として活用していくのも良さそうです。

情報交換のツールとして

会社のテックブログに書きづらい内容ではありますが、その人が転職活動をする際の一種のポートフォリオとしても有用です。 採用面接はお互いの情報交換とすり合わせの場だと思いますが、ブログなどが公開されていると、会社側はその人がどういう課題に直面しどう解いていったか等、考え方の一端を知ることができます。 実際に面接を担当していて、候補者のブログがあると情報量が増えてコミュニケーションが取りやすくなり、お互いのミスマッチも減るような感覚があります。 会社も個人もお互いに情報交換のツールとしてブログを活用することで、よりよい採用体験が生まれるのではないかと考えます。


このように採用だけではなく、ソフトスキル・ハードスキルの向上や、社内共有やコミュニティへの貢献など、テックブログ執筆には1石5〜6鳥くらいの効果があります。

メリットはわかった。じゃあ何を書けばよいの?

「ブログのネタが無い」「何を書けばよいのかわからない」という声はよく聞きます。 テックブログだと主に以下のような内容の記事を書くことが多いと思います。

  • プロジェクトの話
  • 仕事でハマった技術
  • パフォーマンス改善・運用効率化・コスト削減
  • 技術系TIPS、R&D的な使ってみた・入門してみた系
  • 運用フロー改善や組織に関する話
  • イベントに参加した系
  • 登壇する予定、した話
  • 趣味の技術・仕事環境(デスク周りとか)の紹介

これらの中から書きたいネタを書けばよいのですが、その人の興味関心や役割、仕事の内容、時期によっては書きづらい分野もあります。 そういう場合は「今やっている仕事」からネタを探すと書きやすいかと思います。 なぜなら、その仕事の背景や思考の過程・技術的手段やハマりがインプットされて、それらが言語化しやすい状態になっているためです。 また、その仕事を整理したり振り返るきっかけにもなります。 会社の組織・サービス特有の泥臭い現実の課題解決の話こそエンジニアリングの本質だったりすると思うので、個人的に好みな内容というのもありますが…w

書き方やメンタル的TIPS

ネタの賞味期限と技術的正しさ

私が記事を書くときはネタの賞味期限を意識しています。 これは読み手が考える賞味期限ではなく、書き手である執筆者のブログを書くモチベーションが切れる賞味期限です。 例えばプロジェクトをネタにしようとしたときに、リリースして半年以上経ってしまうとそのプロジェクトの内容や苦労した点などブログに書いた方が面白そうなところを結構忘れてしまいます。結果としてブログを書くモチベーションも下がりお蔵入りとなることもあります。 ドメイン知識をあまり含まない分野であれば賞味期限は長めにはなるのですが、それでも時間が経つにつれてパッションや細かすぎて伝わらない話が薄れてきます。

書いているうちに深堀り*2したり技術的に正しいことを書こうとして調べるうちに、書き始めから時間が経ってしまったりモチベーションが下がるケースもあります。 基本的には本能の赴くままに深堀りして良いと思うのですが、モチベーションの維持には注意した方が良いです。 技術的に正しい記事を書くのは難しいですし、間違っていたら訂正すれば良いので*3、完璧を目指さずに適当なタイミングで公開するのも良いと思います。

他の人もやっているし、同じような内容になってしまうんだけど?

同じ内容の記事が複数あったらダメというルールは存在しないので、上で書いたブログを書く効能を狙ってぜひ書いてほしいです。*4
むしろ、会社や組織という文脈がある以上、全く同じ取り組みをしたとしても、同じブログ記事の内容にはならないと考えています。 なぜなら、その取り組みを行った理由・背景・課題へのアプローチ・考え方が、組織とサービス、取り組みを実行した人によって異なるためです。 そしてこの背景や課題へのアプローチにエンジニアリングの難しさと面白さが詰まっています。 背景を伝えることは難しいことですが、文章としてまとめることでブログ執筆者がドメインや組織をより理解するきっかけになったり、その記事が他の人のオンボーディングに役立つこともあります。 仮にそういった背景が無いような記事であっても、 車輪の再発明の効用 の話と同様に、ブログ執筆によって得られる学びは大きいです。

やっている仕事はブログに書けるほど凄くない?

こう謙遜される方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の当たり前は誰かの学び・知見であることがほとんどです。 たいてい、自分がやっていることはそんなに凄いと思わないもので、一種の情報の非対称性と言えるのかも知れません。 また、エンジニアリングは当たり前の積み重ねが大事です。チームの開発力は突出した特異的な技術の有無というよりは、一般的な技術・改善の積み重ねがファクターとして大きいのではないかと思います。こういった一般的な技術の利用を発信することは実はとても大事なのではないでしょうか。

個人ブログ vs 会社ブログ

ブログを既に書いている人にとっては個人ブログで書くか会社ブログで書くか判断が難しいところです。 前述の通り、私はずっと個人ブログを書いているのですが、実は会社ブログを書くのはヤプリが初めてです。 書いていなかった当時は会社ブログで書くのは会社の実績になるような感覚があり、 自分の実績として公開するために、ドメイン知識を抜いた状態の純粋な技術の活用記録を自分のブログに残していました。 ただ、個人のブログである以上、ドメイン知識の説明が必要なエンジニアリングや背景の説明がしづらく、その背景をベースにどのように技術を選択・適用したか・しなかったのかという視点の内容が書きづらいことにモヤモヤを感じていました。

例えば以下のようなドメイン知識などを省いて技術だけ共有した記事があるのですが、これも前提や背景を書けばもっと魅力的な内容になったんじゃないかと思っています。

blog.freedom-man.com

一方で、こちら↓は私が担当していたプロジェクトの内容で、会社ブログだからこそ背景や課題感を伝えることができた記事です。 社内での反響も良く、プロジェクトを知らない人向けの社内認知を広める1つの手段としても良かったのではないかと思います。

tech.yappli.io

今は個人のブログでもドメイン知識や背景を書いてもOKみたいな会社も多くあると思いますが、それでもレビュープロセスなどを含めると会社のテックブログの方が情報集約性なども含めて運用しやすい・書きやすいと思います。そういうわけで、ドメイン知識や背景・前提も伝えていきたい場合は会社のテックブログを活用すると良いかと思います。

ただ、個人のブログは自分の庭みたいなところがありますし、上に記載した内容が必ずしも正ではないので、個人の意見を尊重しつつ向き合うと良いのかも知れません。 ちなみにヤプリでは個人ブログも ヤプリのエンジニア個人ブログ・登壇リンク として掲載していたりします。

時間の確保

忙しいと書く時間がないのは正しくて、ちゃんとした文章構成で正しい内容を発信しようとすればするほど時間がかかります。 良い文章ほど時間がかかるものなので書く人も書いてほしい人もそれを認識する必要があると思います。

ヤプリでいうと YappdateDay という隔週で開催される改善デーがあり、それらの時間を利用してブログ執筆が可能です。 丸1日では執筆が完了しないこともありますが、ある程度まとまった時間を確保できるのは嬉しいです。

ちなみに、個人的には全体構成や言いたいことの概要をざっと書いて肉付けして調整、みたいな感じで進めています。時間がかかりがちな肉付け〜調整あたりは1日30分〜1時間くらい時間を見つけてブラッシュアップしています。

まとめ

テックブログの効果と書き方について紹介しました。 ブログを書こうか迷っている人のひと押しになれば幸いです 🙏

テックブログに限らず、テックイベントでの登壇者が増えたり、自社のTech Conferenceを開催 したり、 YouTubeで発信 していたり、ヤプリのアウトプット力はこの1〜2年で大幅に上がっています。アドベントカレンダーもまさか 2ページ目 ができるとは思わなかった…w

ということで、ヤプリでは引き続きアウトプット力を強化しています! もし興味がある方いましたら是非カジュアル面談でお話しましょう!

open.talentio.com

*1:読み手を意識したブログはメモ書きよりも理解しやすいかもしれません

*2:いわゆる yak shaving

*3:誰も間違おうと思って間違っていないですし、その間違いに悪意がなければ…w

*4:おそらく複数あったらダメだというルールを作っているのは自分